« 行方不明 | トップページ | ブロバン配信の著作権料率は8.95% »

2005年3月24日 (木)

貴方が担当なら連載やめる

新人編集者として、礼儀作法やら、先生方とのお付き合いやらを勉強していたころの話です。

情報処理資格取得経験者として、会社の出版部門の、しかも情報処理資格試験対策雑誌へ配属となりまました。右も左もわからぬ状態で仕事を覚えるので精一杯だったと記憶しています。

原稿の依頼、その原稿の引き取り、赤ペン入れ、入稿手続きの仕方(当時はまだ、手書き原稿が主流でした)、校正ゲラの著者との受け渡しなど、とにかく言われたことをそのまま言われたとおりにやるだけでした。

試験対策雑誌ですから、内容の正確性と、読者に対するわかりやすさの両方が求められました。先生方は大学などで授業の合間、会社員なら日常業務の合間にいっしょうけんめい原稿を書いてくださいます。ですが、いざ紙面に掲載しようとすると、そのままではあまりにわかりにくい原稿が届くこともしばしばあります。

試験対策講座の場合は、数式の計算結果のチェック、使用されている図形や用語などがJIS規格にのっとっているのか? プログラムなら本当に動作するのか、まですべて編集者がチェックしました。そして、チェックした上で、変更が必要な場合、すべて先生方にフィードバックし、原稿変更の許可を得ていたのです。許可を得なければ原稿は変更できない、というのが編集部での教えでした。

当時は編集長の権限が絶大で、素人目には、実際には編集長が一人で雑誌を作っているように見えました。あくまで編集者は外注部隊であり、編集長が疑問に思ったことは、全部、編集者が代わりに解決します。解決するまで入稿ができないのです。

あまりに膨大なチェックが入るので、そのチェックを次回の参考として、どんな内容ならチェックを受けずに済むのか学習しなければなりません。そして、あらかじめチェックを受けないような原稿を作るべく、先生方との打ち合わせを繰り返します。

私が入社直後にお世話になった編集長が、約4ヶ月ほどで新規に立ち上げるパソコン雑誌の編集長に抜擢され、副編集長が新編集長に昇格してから、そのチェックはさらに厳しいものになりました。ひとえに、私に早く育ってほしいのだ、と思うことからの行動だったと思ってましたが、当時の同僚いわく、単なるパワーハラスメントだったようです。

パワーハラスメントだったのかはともかく、もしかしたら、その新編集長のチェック内容のとばっちりを受けたのは、実は筆者の先生方だったのかもしれません。

私があまりにしつこく問い合わせをするためなのか、担当している先生のうち、1人(実は、大学時代の恩師のひとりでした)を除いて、そのほか全員(4人)から「現在の連載が終了したら、しばらく休みたい」と申し出されてしまったのです。

何人かは説得することで事なきを得ましたが、何人かの先生は、本当に連載が終了し、その後、音沙汰がなくなってしまいました。

辞めてしまわれた先生たちは、何をもってして、やめる決断をしたのでしょうか?

担当編集者が新人に代わった上、礼儀知らずでやってられない、と思ったのかもしれません。

情報を発信するメディアとして、実は、優良なコンテンツを発信できる優秀な人にそっぽを向かれてしまうのは死活問題です。それをつなぎとめるのは、著者なら原稿料、タレントなら出演料が、一部には担っているでしょう。

しかし実際には、人と人との付き合いの比重がとても高いのも確かなのです。優秀な企画を作れる編集者と著者がすばらしいパワーを発揮するケースは多々あります。放送なら、タレントと、その理解者であろうプロデューサー、ディレクターがいるからこそ、番組が成り立つのです。その中でもっとも重要なのは、雑誌なら著者、放送ならタレントです。

編集者、編集長は、そんな優秀な著者先生方が離れていかないよう、人間として魅力的でなければなりません。ほかのメディア系も同様です。

人どうしのつながりが重要である以上、それまでの担当者が理不尽に見える形で交代になることに違和感を感じ、仕事をやめたいと考えるのは、自然なことのようです。ですから引き止めたいのであれば、新担当者とその上司は、誠心誠意な対応を心がける必要があります。

もっとも、編集者、著者先生ともに、代わりの人がいっぱいいるのも現実であり、そんな人たちにとってはチャンスのはずです。


※誤字修正のほか、少しだけ手を入れました。(2014/05/21追記)

« 行方不明 | トップページ | ブロバン配信の著作権料率は8.95% »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

旬な書籍など

当ブログの注意事項

  • ブログ記事に関して
    当ブログの内容は、執筆者である松本勝晴のこれまでの生活、経験、情報入手の蓄積により、あくまで一個人の見解、私見、ポジショントークを表しています。記事をご覧になるみなさまのこれまでの生活、経験、情報入手の蓄積によっては不愉快な思いをされる場合があります。ご注意願います。
  • 自己責任のお願い
    当ブログでは、金融資産運用、保険などリスク管理、社会保障、税制に関する話題において、その実践結果の報告や、将来の展望に関するコメントなど情報の提供を行います。しかし、その情報は将来の結果を約束するものではありませんし、ご覧になるすべてのみなさまに等しくお勧めしているわけでもありません。特に金融商品の売買に関してはさまざまな事情により元本割れを起こす可能性がある点についてご留意願います。
  • 常に最新情報をご確認ください
    当ブログの記事の内容は、原則として各記事フッター部に掲載の執筆年月日時点のものであり、実際にご覧いただく時点では、制度変更などにより事実と内容が異なることや、解釈が異なる場合があります。当ブログだけを当てにせず、最新の情報をご確認ください。
  • 免責について
    当ブログ内の情報の利用、およびリンクされている第三者のサイトの閲覧やサービスの利用、各種判断については、読者のみなさまの責任においてなされるものであり、行った行為によって生じた一切の損害について、当ブログ執筆者および関係者は責任を負うものではありません。
  • トラックバック、コメントに関して
    当ブログでは、トラックバックおよびコメントの受け付けは一部ページのみで行っています。レスポンスはTwitter経由でお願いいたします。
  • 引用は適切に! 無断転載お断り!
    当ブログを引用する場合は適切に行ってください。無許可による全文の機械的な転載もしくはそれに相当する行為を発見した場合は、松本もしくは松本が正式に依頼した代理人より連絡のうえで、当方既定の原稿執筆料を請求させていただきます。
  • アフィリエイトプログラム
    松本勝晴は、amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。
  • 商標に関する説明
    CFP®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、 日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。