FP会社処分の情報を集めてみました
2010年3月5日、金融商品仲介業を登録する北海道のFP会社が、証券取引等監視委員会より処分の勧告を受けました。その処分勧告にのっとり、2010年3月16日、このFP会社は、金融商品仲介業登録の取り消し処分を受けることになりました。
この件に関して、数少ないWebからの情報を調査したり、身近な人の見解を聞いたりしました。
私自身、この件は、今後のFPとしての活動にかなりの影響が出る可能性が高いと思っています。これまでFPと金融商品の取り扱いに関する苦労など思うところがありますので、まとめてみることにしました。
まずは、3月16日現在で、Webで確認できる情報をピックアップしておきます。
株式会社北海道ファイナンシャルプランナーズに対する行政処分について:金融庁
↑のリンク先、PDFファイルの文章が重要です。
このFP会社は、金融商品仲介業を登録していましたが、
○金融商品仲介業者に係る制限を逸脱する行為
を行ってしまったことにより、行政処分の対象となりました。処分の内容は、先ほども書いたとおり、
【登録取消し】 北海道財務局長(金仲)第28号の登録を取り消す。
というものです。
すなわち、投資信託など金融商品を販売できるよう、金融商品仲介業登録をしていたのが、その登録が取り消された、ということです。
ちなみに、今回の処分の対象になったFP会社のホームページです:北海道ファイナンシャルプランナーズ
トップページに、今回の処分に関して、関係各位にお詫びする旨の挨拶があります。
※当時の挨拶はに残っていません(2014年4月1日加筆)
新聞記事にも注目です。
北海道新聞のWeb記事 ※リンク切れなので外しました。(2014年4月1日加筆)
北海道新聞の記事によると、証券会社との委託契約外の絵画系の私募ファンドなど3種の募集や、投資に関する助言を行っていた、とのことです。
日本経済新聞のWeb記事 ※リンク切れなので外しました。(2014年4月1日加筆)
日経新聞では、投資助言業として登録していないのに、投資助言を行ったことを中心に書いています。
ところで、絵画系の私募ファンドとして、思い当たる節があったのですが、上のFP会社のホームページの右下のほうに、それらしきリンクが残っていました。
Art Investment Bank ※リンク切れなので外しました。(2014年4月1日加筆)
実は、この会社も、2月8日に関東財務局から処分を受けていました。
金融庁:報道発表資料:株式会社Art Investment Bankに対する行政処分について
ちなみに、絵画系私募ファンドを組成していたほうの会社は、第二種金融商品取引業の登録がなされていました。
ここで改めて、問題になった処分に至る内容について、こまかく見ていきます。以下、財務局文書の引用です。
当社は、金融商品仲介業者であるところ、当社代表取締役社長は、当社の金融商品 仲介業務の顧客(当社が仲介業務として金融商品の媒介等を行った顧客。以下「仲介 顧客」という。)との間で、会員契約を締結し、仲介顧客から会費を徴収する一方、仲 介顧客の金融資産のポートフォリオの分析・構築等といった業務を提供しているが、 当社の行っている当該業務は、具体的な金融商品の銘柄や数量、購入時期等を提案す る等となっており、実態としては投資助言行為を行っている状況であると認められた。 また、当社は上記投資助言行為を行った仲介顧客に対し、所属金融商品取引業者から の委託を受けることなく、私募ファンド等の商品内容の説明や取得の提案を行うなど、 私募の取扱いを行っている状況も認められた。 当社及び当社の役員が行った上記の行為は、金融商品取引法第66条の12に規定 する「金融商品仲介業者に係る制限」に違反するものと認められる。また、当社及び 当社の役員は、上記記載の行為を業として行っているといえ、同法第29条に規定す る「金融商品取引業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができな い。」に違反するものと認められる。
FP会社は、何に対して処分を受けたのか? それが、FP仲間での間で問題になりました。
・仲介業を行い、なおかつ、仲介業の顧客からFP顧問料を受け取ったことによる処分なのか?
・仲介業としてポートフォリオ分析構築をしたがその後、顧客対応時に金融商品の勧誘にとどめず、個別具体的な銘柄、数量、購入時期を提案したことによる処分か?
・仲介業であるにかかわらず、委託を受けていない別な会社の金融商品、私募ファンドを取り扱ったことによる処分か?
FPは、相談料なり、顧問料なりを受け取れるサービスを心がけており、これを否定されることは事業計画の根幹にかかわる一大事です。
また、FPとしては、金融資産運用のアドバイスは避けて通れません。これは通常、まずは国際分散投資の基本的な解説から始まり、アセットアロケーションの決定が金融資産全体の運用パフォーマンスの9割を決めるといった理論を理解していただき、各アセットの比率を決める。ここまではFPが決めるのは問題ない、というのがこれまでのコンセンサスでした。
しかし、アセットアロケーションを決めた後、具体的なポートフォリオ作成にかかるとき、通常は同じ人が行います。ポートフォリオ作成には、個別具体的な銘柄の選択は避けて通れません。ましてや、これから初めて投資をする、なんて顧客が相手のときに、どれくらいの金額を使って商品を購入するのかを、はじめから顧客まかせにするのは非現実的です。一部の(多くの?)FPはそのために、ポートフォリオ作成以降は独立系IFA(外務員)としてお手伝いできる体制を作っているのです。きっちりFPの仕事と、IFAの仕事(ついでに、生保募集人の仕事)を分けるよう、神経を使っているのです。
ですが、これらが「実態としては投資助言行為を行っている状況であると認められた」となると、これもまた深刻な状況になります。
最後に、別な会社の私募ファンドを取り扱った点ですが、私としては、ここは一番の落ち度だと思いますが、別なFPから言わせればここも大問題です。なぜならばFPは、あらゆる商品を取り扱うべき、という考え方もあるからです。
事実、あらゆる商品の一部として、私自身も、上の絵画系私募ファンドの勉強会に参加しています。
FPは顧客とライフプランを共有し、その実現に向けてのお手伝いをするのが重要であり、実現のためにどのような商品を使ってもそれはかまわない、という考え方に基づいています。もちろん、どのような商品なのか、私ども自身が研究しなければなりませんし、しっかり研究し、顧客に提供できると認めたもののみ、提供するのです。
あえて言えば、私募ファンドを扱うために、絵画系私募ファンドの会社に対して、FP会社が金融商品仲介業者登録をしていれば、この部分は問題なかった、とも考えられます。
ただ、上記の3つのことから、FPと金融商品仲介業というのは、実は親和性がとても低いのだ、ということが改めてわかりました。
一部のFPの人は、これではFPの仕事はできない、と感じた人もいるようです。
特に、FPとしてのコンサルティングを重視する場合、今後は、金融商品仲介業を行うべきなのか、非常に慎重に考える必要があるでしょう。
金融商品仲介業を行う場合は
・取り扱う金融商品は委託を受けたものに限る。
・FPとしての金融資産運用アドバイスはアセットアロケーション設計までにとどめる。
・商品の勧誘に、金融商品仲介業としての資格をフル活用する。
・広告等資料は既製のものを法令に則って使用する。
・ただし、金融商品仲介業では、金融商品の選択、購入金額と購入時期の決定は顧客に決めていただくことを徹底する。
以上の点に注意して行うべきなのでしょう(プロの仲介業に徹するなら、当たり前のことばかりです)。
お客様にとっては非常に不便を感じさせることになるでしょうが、倫理観の高いFPの人たちならば、FPとしての立場と、独立系IFAとしての立場を、しっかり線引きして対応することになるでしょう。
※事件当時、諸般の事情により公開を断念した内容を一部修正して再公開いたします。(2014年4月1日加筆)
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